研究概要 |
本研究によって以下のような成果を得た。 1)多ポイント方式を使用し、脳血液量や酸素飽和度を定量的に測定できる近赤外反射測光装置を試作した。装置には705,810,880nmの3波長の発光ダイオードを使用し、ラットの低酸素実験により得られた。それぞれの波長に対する係数を酸素飽和度を求める演算に用いた。2)これによりファロー四徴症新生児の脳血液酸素飽和度を測定したところ、患児の動脈血酸素飽和度より高値であったので、ラット脳組織のバックグラウンドがヒト新生児と異なることが見出された。そこで、死亡直後の新生児のデータを使って、装置の酸素飽和度の演算式をヒト新生児に当てはまるように修正した。3)10名の正常成熟新生児の脳ヘモグロビン量を測定したところ、その結果が平均42.5%absorptionであり、これを換算すると脳血液量は3.69ml/100gとなった。この値は成熟新生児の脳血液量としてはきわめて妥当な値であることが判明している。4)しかしこれまでの装置では、異なる3波長の発光ダイオードは受光部に対して並列に3mmずつ離して設置するように設計しており、しかもダイオードはいつも同じ順番に設置していた。この設置の順番を変えてみたところ、脳血液量はほとんど変動がなかったが、微妙な計算式から計算される酸素飽和度には大きなばらつきが生じ、受光部に対して3mm前後の微妙な距離の変化によっても計算値が変化することが判明した。この問題の解決が今後の課題となるが、それは3波長のダイオードの光を同一点から発射するファイバーを組み込んだプローブを作製すれば可能と考えられる。また、受光プローブの形態を改良すれば、よりノイズの少ないデータが獲得できると推測できる。
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