研究概要 |
本研究成果報告書は,『雑阿含経』(『大正新脩大蔵経』第2巻,pp.1ff.)に対応するインド語テキストを収集したものである。『雑阿含経』のインド語テキスト(Samyuktagama)は失われ,その一部が断片的に現存するにすぎない。 かつて,『雑阿含経』は説一切有部に所属すると考えられていたが,説一切有部は,インド仏教の最大部派の一つで,北インドのみならず,中央アジアにまで広がったため,その内部にカシュミール有部やガンダーラ有部などの幾つかの分派が生じた。最近の研究によって『雑阿含経』は根本説一切有部の伝承に最も近いことが明らかにされてきた。筆者は根本説一切有部を説一切有部内部の一分派と見なす。根本説一切有部は,しだいに説一切有部内部で最大の分派になっていったと考えられる。 本研究成果報告書には,説一切有部ないし根本説一切有部の文献から,『雑阿含経』の各経に最も近いインド語テキストの箇所が収集されている。そのインド語テキストは以下の三種からなる。 (1)インド語テキストの写本断片。 (2)説一切有部の文献の中の引用箇所。 (3)説一切有部の文献に所属ないし由来し,『雑阿含経』に部分的に対応する箇所。 本報告書は,『雑阿含経』の最後の章である*Samgitanipata(『雑阿含経』巻4,22,36,38-40,42,44-46,48-50)を扱う。
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