研究概要 |
本研究は反応時間(RT)を指標として目標志向態度を規定し,それと時間評価(ET)の関係を実験的に明らかにすることである。また,時間体験の因子分析的研究により時間が意識される生活状況を分析するである。研究成果報告書にはこれらに関する2実験,2調査の結果が詳述されている。実験研究では,foreperiod(反応時間の測定におけるヨーイの合図後刺激が呈示されるまでの間)の長さ(1〜16秒)の違いによるRTとそれらを標準時間とするETの傾向および両者の相関関係を検討した。さらに,foreperiod(12,16秒)中に課題を負荷した事態でのRTとETの関係を調べた。課題は2桁と4桁の数列の逆唱である。実験結果:(1)TRは予期事態(用いるforeperiodについての予告あり)で短い。ETは予期事建で僅かに長めであった。(2)RTとETの相関関係は予期事態において統計的有意な相関係数を示す被験者が多かった。(3)課題負荷事態でのRTは無課題事態よりも僅かに長く,変動も大きい。また,4桁逆唱時のRTは2桁逆唱時のそれより長い。ETは4桁逆唱時の方が短い。(4)RTとETの相関係数は課題負荷事態でも予期事態で統計的に有意な相関係数を示す者が多かった。しかし,正負の符号が混在し,RT-ET間の一義的関係を推量することは困難であった。 調査的研究では,大学生を対象に「時間」の言語的概念に対するイメージをSD法により調べた。性差・性格差を吟味したが,女子のやや過敏な反応が認められた。またYG性格型のDとE型群間に評定値の差異が顕著であった。次に,時間体験に関する40項目の調査では因子分析により時間不安・将来展望・時間活用性・時間観と名付れた4因子を抽出した。特に,ここでは因子得点を指標に性差・性格差を検討した。その結果,(1)性差がよく現れるのは将来展望と時間観の因子である。(2)性格型の違いが出たのが時間不安であるなどの傾向が顕著に認められた。
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