研究概要 |
1.視野闘争の空間的交互作用を探る実験:Grossberg(1987)は、メカニズムの異なる2つのタイプの視野闘争があると述べている。1つは両眼対応部に呈示される異なる傾きをもつ刺激間の闘争(競合)であり、今1つは空間的に少し離れた同じ傾きの刺激間の競合である。ここでは後者に関し、その両眼間抑制の空間的特性を調べた。即ち、一眼に線刺激を先行呈示することにより他眼の線分の検出がどの程度抑制されるかを凝視点からの距離の関数として調べた。結果は、抑制刺激からの距離が視角15分のとき最大の抑制効果を示し、約30分でその抑制効果が消失した。又、抑制刺激の強度を閾レベル,閾上0.5 log unit,閾上1 log unitの3条件としたが、抑制の深さは刺激強度から独立であった。2.時間的側面:視野闘争事態でその刺激呈示時間を200ms以下に短くすると、もはや両眼刺激情報間で闘争がおこらず、両眼融像図形がみられることが知られている。この異常融像象を用いて、両眼性プロセスについて探った。多くの種類の視覚的順応において、その残効が両眼間転移し、しかもその転移した残効量は順応した眼で直接測定された残効量より小さいことが知られている。これは、単眼性プロセスとORゲ-ト的な働きをする両眼性プロセスを考えることで説明されてきた。では、両眼性ANDプロセスは存在するのかというと、これには存否両方の結果が報告されている。そこで、もし両眼性ANDプロセスがあるのならそれによる順応がすすむことが期待されるようなランダムドットステレオグラム(RDS)を用いて視覚的順応をおこさせ、検査するときにはORプロセスしか働きえないような異常融像刺激を呈示した。その結果、ORプロセスしか働かないと考えられる状況下でもRDSによる順応の顕著な残効が示された。この結果は、両眼性ANDプロセスを想定する必要がないことを示唆するものと解釈される。
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