研究概要 |
協同組合,とくに生協の基盤になっている生協の社会文化的特徴の日欧比較を試みた。1.協同組合を生みだした西欧の都市には,市民性・公共性・協働性の伝統のある点をたどり,2.価値意識の日欧の差を,(1)個別主義太普遍主義,(2)集団主義個人主義,(3)無限定性対限定性に求め,又,西欧の自律的価値(脱伝統価値)の顕在化と協同組合との関連に注目した。3.生協の事業範囲については,前項第3の対比で,限定的目標のドイツ生協,無限定的目標の日本の生協を,総代会資料,定款を中心に比較して範囲の広狭の差を検証した。4.日本の代表的生協として,コ-プこうべを中心に,上位10位までの都市圏型の生協の事業範囲を比較した。購買生協としての本来的な供給活動以外に,生活文化活動・福祉活動の浸透が広く見られた。 日欧生協の意思決定を比較するための準備も兼ねて,コ-プこうべの係長以上の職員1200名を対象にして, '92年1月から2月にかけて「生協内コミュニケ-ションと意思決定構造に関する調査」を実施した(回収率78.2%)。単純集計結果から得られる主な知見は次の通りである。1.職務の遂行にあたって一般組合員の意向を重視する割合が高いが,担当部署の方針決定には理事会や所属長の影響力が大きいと認知されている。2.役職員の会議においては,議長ないし所属長が最終決定する割合が高い。3.生協全体に対する実際の影響力としては,商品部,運営部,経営企画室の順で大きい。これに対して,4.影響力を持つべきだと考えられている部門は,組合員,地区本部,経営企画室の順となり,実際の影響力と本来持つべき影響力との間にギャップが見られる。5.コミュニケ-ションの頻度に関しては,組合員・地区内の他事業所・店舗,生産者・納入業者の順で高い。
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