本研究では、再生可能エネルギ-技術(いわゆる「適生技術」)の導入が地域社会形成に及ぼす影響、とりわけその導入によって、自治体担当者や地域住民が、より主体的、「内発的」なスタンスで地域形成(地域おこし)に関わるようになる条件を実証的に検証することがめざされた。分析の観点として、再生可能エネルギ-技術導入の経緯、問題意識、主体ないし組織、資金源(補助金の有無)、制度的背景などを考慮した。主な知見は以下のとおりである。 第一に、導入の経緯としては、石油危機以来の環境・エネルギ-問題の深刻化にともなって環境負荷の少ない再生可能エネルギ-源の利用を推進した場合と、身近にありながら見過ごされてきた自然エネルギ-を地域振興に活用していく目的で導入された場合に大別される。前者は都市部自治体のエネルギ-多消費型の公的施設などに、後者は地方の過疎の自治体などが地域活性化の手段として導入する場合が多い。第二に、補助金に依拠したモデル事業的な事例と独自の財源で行なった事例を比較すると、対象事例の範囲では、後者の方がより問題意識やコスト感覚が明確であり、足元の資源を用いた地域おこしや住民に対する環境教育的な効果を発揮しているものが多い。前者においては、あくまでもモデルで終わってしまっている事例もみられた。第三に、再生可能エネルギ-技術導入が主体的な地域形成や行政サ-ビスの再考に結びついた事例においては、その導入によってエネルギ-問題以外の地域の諸問題へと視野が拡大されたり、そもそもその導入時から地域再生や地域環境全般への問題がかなり明確に認識されていた場合が多い。 総じていえば、成否の主体的要因として、導入主体の問題の意識の明確さが、客観的要因として、補助金や売電措置など制度的援助があげられるが、前者を後者が生かしきれていない現状が問題点として指摘できる。
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