日本人の「民族関係」の可能性を現状において評価するために、大阪市生野区を調査した。生野区を選定した理由は、そこの在日韓国・朝鮮人人々口が約4万人で、区人口の4分の1を占めており、その意味で日本最大のエスニック・コミュニティだからである。しかも、昨今の外国人労働者の流入に伴ってあらたに出現したエスニック・コミュニティとは異なり、歴史があり、その意味で「成熟した」地域社会という、したがって、21世紀にむけて日本国内が国際化する方向を見定めるための「モデル・コミュニティ」ともなりうるからである。 さて、調査は、日本人と在日韓国・朝鮮人の共同化の可能性を探るという方針で進められたが、その結果、両民族に剥奪状況があり、かつ、その克服の方法が、両者の協働以外には見定しいときに、共同化の道が模索されていることがわかった。具体的には、PTA活動、斜陽化高店街の振興計画、地域福祉活動などである。いずれも、在日ぬきには日本人自身の活動が不可能になった「限界状況」において、はじめて共同が現実のものとなっている点で共通した3例である。 したがって、剥奪状況という条件の無いところ、両民族はますます自己の民族的アイデンティティを際立たせながら隣りあっているというのが、少なくとも生野のエスニック・コミュニティの現実といえよう。 なお、剥奪状況の他にも、共同化の条件はいくつか考えられると思うそうした諸条件の体系的把握が、今後の代題となるだろう。
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