研究概要 |
平成3〜5年度に日本列島の3地域に居住する442家族(岩手群153,東京都群169,沖縄群120)を対象として青少年とその家族の自己概念を質問紙法と面接法によって調査した。これらの被検児は筆者が乳幼児期と学童期にも調査したので,資料の分析に際しては横断的方法のみならず縱断的方法によっても解析した。 その結果(1)青少年の自己概念は生活の満足度が高いほど,家族の援助の程度が高いほど,課題意識の高いほどどの地域においても高かった。従って,これらの3変数は一般的に青少年の自己概念の高低に関与する重要な変数となることを示唆していた。一方,2地域に共通する本土型(岩手県と東京都に共通)や逆都会型(岩手県と沖縄県に共通)の変数,あるいは3地域それぞれ異なる変数があることも明らかになった。これらの結果は単純に1地域あるいは2地域の比較によって得られた結果を青少年の特徴として一般化できないことを示唆していた。(2)乳幼児期・学童期から現在までの縱断的資料の解析による最も興味ある結果は男子と女子の自己概念形成に関与する変数に質的差異があったことである。母親の高学歴,父親の自己概念の低さ,父親の職業の種類などの変数は男子と女子の自己概念の高さに逆の方向に作用していた。これらの結果は父親と母親が男子と女子の自己概念形成にそれぞれ質的に異なる役割を果たしていると推測される。(3)都市化の進行に伴う価値観の夛様化はいずれの地域においても浸透していた。このような状況下でライフ・コースの転換期にある青少年期の子ども16%と中年期の親14〜18%が支援を必要とする潜在的問題をもっていた。今回考案した日本版簡易化自己概念測度はこれらリスクの高い青少年と親を把握し早期に支援する技法として実用的観的から役立つことが明らかになった。
|