研究概要 |
本研究では,南北分断を決定的なものにしたアメリカとソ連による朝鮮統治期間(1945-48)と,その後南北が大韓民国(以下,朝鮮)と朝鮮民主主義人民共和国(以下,北朝鮮)として分離独立した1950年代における教育改革の理念と実際を,「アメリカ・モデル」と「ソ連モデル」の受容と展開の観点から比較分析することを第一の目的にした。その後,南北朝鮮は,1960-70年代を通じ,独自モデルの構築を目指して,極めてユニークな教育改革を実践してきた。この自立モデルの検討が,本論の第二の目的であった。 実際の研究の過程においては,韓国については資料的な蓄積もあったので,高等教育を中心にある程度の分析的検討を行なうことができた。ところが北朝鮮については,特にこの20年間のいわゆる鎖国状況が続いているため,教育改革に関する一次資料の入手がきわめて困難である。そこで法令などの一次資料の翻訳を中心に,教育改革の動向をたどることが作業の中心となった。近年,韓国側研究者の北朝鮮研究が盛んになっているのは事実であり,そのいくつかについては収集して検討した。しかしそれらの研究にも資料上の制約にため,実証的研究とはなっていない。 このような理由により,当初の目的であった「比較分析」を行なうにはいたらなかった。しかし現時点で入手しうる貴重な文献資料を,本研究を通じて収集できたのは,将来の本格的研究を行なう準備が整ったという意味で,きわめて有意義であったといえる。本研究を通じての研究成果は,今後数年にわたって発表していく予定である。
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