研究概要 |
本研究は,都道府県・政令指定都市の教育政策形成過程において,どのような教育関係団体がどの程度の影響力を持ちえているのかを検証することを課題として行われたものである。今年度調査においては,都道府県・政令指定都市にかなりの自由裁量の余地があり,それぞれ独自の政策を展開していいる度合いが高いと考えられる「新しいタイプの高校づくり政策」を対象として選定した。まず,「新しいタイプの高校」の設置を検討した審議会や検討委員会の有無とその検討機関の構成員について全国調査を行い,どのような団体の代表者がどの程度の割合でかわっているのかをみた。この予備調査を踏まえ,次に,いち早く「新しいタイプの高校づくり」に取り組んだ埼玉県を事例として高校設置までの過程を調査し,その政治過程における団体の位置を明らかにした。さらに,教育関係団体の当事者として,中学校及び高校のPTA,校長会,教頭会,及び高校の教職員組合のうち最も組織率の高いものという7団体を選び,「新しいタイプの高校」の設置に対する自らの関与についてどのような認識を持ち,その役割や影響力をどのように自己評価しているのかについて,全国アンケート調査を実施した。 以上の調査によって,教育関係団体の関与・働きかけは,主として検討機関への参加,意見表明なでの形で存在し,その影響力は政策形成・実施を積極的にリードするという性質のものではなかったが,政策形成・実施過程において無視できない存在となっており,今日一層多元的構造となりつつある教育政策形成過程において,教育関係団体がひとつの重要なアクターとして,一定の役割を果たしていることが明らかになった。
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