戦後の社会教育に大きな影響を与えたIFEL・青少年指導者講習会は1948年から50年にかけて4回にわたって実施された。昭和10年代の軍国主義的な青少年施策の影響で、多くの青少年指導者は民主的な青少年指導の方法については案中模索の段階であった。IFELで導入されたグループワークの方法論によって指導者たちは民主的な討議法と団体運営法を体験的に学んだ。グループワークは欧米に起源をもつYMCAやボーイスカウトなどの指導者にとっては比較的理解しやすいものであった。しかし、日本独自の青年団体である青年団にとってはその適応に困難を生じた。GHQの基本政策は戦時中の政府による青年団体への統制の教化の排除であった。従ってその政策の基本目標は地域青年団の民主化にあった。 GHQの教育政策を担当したCIEでは、学徒隊・青年学校の廃止→YMCAなどリベラルな青少年団体の復活→青年団全国組織化の抑制→ネルソン通達による政府補助金の禁止→社会教育法の公布→IFEL・青少年指導者講習会でのグループワークの導入→青年団のインタレスト・グループ化→日本青年団協議会の結成、という手順で青年団の体質改善と民主化を図った。しかし、青年団のインタレスト・グループ化は結果的に青年団の活動の停滞を招き、後に青年団自身により「共同学習」という方法論が創り出される。共同学習論にはグループワークと日本独自の生活綴方の方法が取り入れられている。 IFELの影響は青年団体の活動方法論に留まるものではなく、IFELによって培われた人間関係が「日本社会教育学会」や「中央青少年団体連絡協議会」の結成に大きく寄与している。また、社会教育主事制度の成立過程にも影響を及ぼしている。
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