研究概要 |
この間,財政の合理化,縮減という状況の下,教育財政の領域においても公教育費の合理化とともに教育の質向上に対する要請が高まり,経費に見合う学校教育の成果と責任性を問うアカウンタビリティの要求が強まってきた。先進各国ではそれらの要請に応えるため,教星の質向上に寄与する効率的な教育予算編成や教育財政管理に関わる諸改革を試みてきている。本研究では,それらの改革動向に注目し,特に著しい特微のみられるアメリカ,イギリスの改革と日本の問題状況を検討した。これらの検討から次のような教育財政改革の特微を見い出すことができた。 (1)教育行政システムの基礎的政策決定単位として個々の学校を位置づけ直していること(米…学校単位の教育管理,英…1988年法による自律的学校経営,など) (2)教育予算を含む権限の多くを学校に委譲し,又父母の学校経営参加を促か試み(東京都中野区の教育予算枠配分方式・学校フレーム予算,米…学校単位の教育予算編成・父母審議会などの父母参加機関の設置,英…地方教育当局から学校,学校理事会への権限委譲など) (3)それ以外に,アメリカ・イギリスでは,部分的なヴァウチャー制度や自由入学制度(open enrollment),教員給与の実績に応じた傾斜配分など親の教育選択権の拡大や学校,教員の自己努力と責任を促か改革も試みられていること (4)中央-地方行政機関,及び行政機関と学校との間の権限再編と行政機関の機能の変化が見られること 本研究においては,上記のなかでも主に(1)(2)を中心に研究作業が進められ,(3)(4)については今後への課題を残した。教育の質向上に連なる教育改革にとって教育財政はいかなる役割と可能性を有しているのかを明らかにすることが一層求められているが,(3)(4)はそれに必要な課題である。
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