研究課題について調査の対象とした東北地方の3県について、関係諸機関の協力をうけて基礎史料である「皇国地誌」の確認作業をおこない、判明の分のコピーと研究課題に関係ある行政文書を収集した。 1.岩手県 次の機関で『厳手縣管轄地誌』の完本を所蔵している。 (1)岩手県立図書館 内務省へ提出した副本がある。このコピーを収集した。 (2)盛岡市中央公民館 南部家旧蔵。 2.宮城県 宮城県図書館に県の副本で11郡(1郡は付図のみ)所蔵する。このコピーを収集した。県内の残存調査は十分でない。 3.福島県 県として完成したのは4郡のみである。福島県立図書館に県の副本である4郡を所蔵する。4郡のほか未完成の郡については、福島県立図書館・福島県歴史資料館や地方に出張してコピーを収集した。県内の研究者に関心が強い。 3県の「皇国地誌」は、いずれも神仏分離が終了した時点での社寺の状況が記載され、貴重な史料である。しかし、「皇国地誌」の雛形で「古跡」の欄に廃寺跡の記載が求められているのに、3県共通して寺院の廃止・合併の記載がない。これは他地方の「皇国地誌」と異なる大きな点である。今後研究課題を深化するには、県市町村の社寺関係の行政文書を手掛かりとして進めるべきであろう。筆者は廃仏毀釈の一形態として神葬祭運動を重視している。福島県を事例とした研究発表は本研究課題の一成果である。
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