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フランス幻想文学における語り手と信憑性の問題の言語学的解析

研究課題

研究課題/領域番号 03610246
研究種目

一般研究(C)

配分区分補助金
研究分野 仏語・仏文学
研究機関京都大学

研究代表者

田口 紀子  京都大学, 文学部, 助教授 (60201604)

研究期間 (年度) 1991 – 1993
研究課題ステータス 完了 (1993年度)
配分額 *注記
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1993年度: 200千円 (直接経費: 200千円)
1992年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
1991年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
キーワード幻想 / リアリズム
研究概要

平成3年度から5年度までの、具体的・個別的な幻想小説の分析によって得られた知見を総合して、フランス文学における小説というジャンルの成立とその変容の中で幻想小説の持つ意味について得られた結論は次の通りである。
フランスでは、小説というジャンルは、18世紀後半の「個人」の発見にともない、個人としての真実の表明という価値を持った一人称の物語として、市民権を得るに至った。幻想のテーマは、小説というジャンルがまじめなものとして認められる以前から、いわゆる「おとぎ話」の類に特徴的なものであったが、19世紀初頭の、個人的情熱、憂鬱、苦悩などのテーマを中心に掲げた、ロマン主義の隆盛と癸を一つにして、ドイツの幻想作家ホフマンの作品が紹介されると、悪魔・魔法・幽霊・吸血鬼といった、ロマン主義的な意味で「過剰」なものをテーマとして、多くの作品が書かれた。
しかし、小説の「本当らしさ」が、個人的なものから、社会的、歴史的なものへ移るにつれ、小説は3人称で書かれるようになり、バルザック、フロベール、モーパッサンらの写実主義、自然主義的小説が本流となる。この時期にも幻想的テーマの作品は書かれるが、客観的真実を担うものとしての小説と、幻想的テーマとの相克は、次のいずれかの方法で調停される事が観察される。まず、バルザックの『あら皮』や、フロベールの『聖アントワーヌの誘惑』にみられるように、三人称による小説世界は現実性を失い、そこで語られる幻想的な事件は象徴的磁場にとらえられるようになる。もう一つの方法は、モーパッサンの幻想作品に多くみられるように、登場人物の一人が一人称で幻想的事件を語り、その真偽は聞き手の判断に任せるという形式をとり、三人称の語り手は幻想的事件の語り自体には関わらないという方法である。
以上の観察から、幻想は「私」によって体験されたものとしてしか、信憑性を持ち得ず、幻想小説が普通三人称で語られるおとぎ話と異なるのは、まさにこの語り方の違いである事が明らかになった。そして、この「個人的体験」を語る幻想小説が、次第に「私」の意識・認識への疑いを中心的テーマとするに至るにつれて、小説自体を再び一人称の「個人的真実」へと回帰させる契機となった事も後づける事ができた。

報告書

(4件)
  • 1993 実績報告書   研究成果報告書概要
  • 1992 実績報告書
  • 1991 実績報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (11件)

  • [文献書誌] 田口紀子: "フランス語人称代名詞の転用" 仏文研究. 23. 1-10 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1993 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] TAGUCHI,Noriko: "Sur la transposition de personne en Franeais" Les Actes du20〓Congres International de Linguistigce et Philologie Romanes. 741-750 (1993)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1993 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 田口紀子(分担): "フランス語とはどういう言語か" 駿河台出版社, 339 (1993)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1993 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 田口紀子(分担): "文学研究とは何か-方法論の手引き" 新曜社, 500 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1993 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] TAGUCHI, Noriko: "'On the transpositon of person in French'" Futsubun Kenkyu (Journal of french literary studies). Vol.23. 1-10 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1993 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] TAGUCHI, Noriko: "'Sur la transpositon de personne en Francais'" Les Actes du 20e Congres International de Linguistique et Philologie Romanes. 741-750 (1993)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1993 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] TAGUCHI, Noriko: What is french language?. Surugadai Publishing, 339 (1993)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1993 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] TAGUCHI, Noriko: What is literary study? A Guide of methods. Shinyosha Publishing, 500 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1993 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 大浦康介 編: "文学研究とは何か-方法論の手引き-" 新曜社, 350 (1994)

    • 関連する報告書
      1993 実績報告書
  • [文献書誌] 田口 紀子: "フランス語人称代名詞の転用" 仏文研究. 23. 1-10 (1992)

    • 関連する報告書
      1992 実績報告書
  • [文献書誌] TAGUCHI,Noriko: "Sur la transposition de persoune en Francais" Les Actes du 20^e Congres International de Linguistigue et Philologie Romanes. (1993)

    • 関連する報告書
      1992 実績報告書

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公開日: 1991-04-01   更新日: 2016-04-21  

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