研究概要 |
〈多言語・多民族文化論〉,〈民族語・民族文学論〉を別稿としてまとめる中で,アフリカにおけるイスラムの影響を地域別に比較し,それが書記文学,広い範囲での地域共通語を生み出すプロセスを考察した。 成立以後1世紀足らずで,イスラムは黒人アフリカに到達し,各地で宗教的混交(シンクレティズム)を起こしたほか,北アフリカからサハラの交易路に沿って縦断し、西アフリカ内陸部をイスラム化し,やがて国家形成を促した。18〜19世紀のフルベ人の聖戦はイスラムのいっそうの土着化につながった。一方,東アフリカ海岸地方では,わずかに海岸部に小規模なイスラム都市国家(ウンマ)が建てられたが,イスラムは土俗的なものと混交しながらも土着化する程度は乏しく,人々は海の彼方に自己のアイデンティティを求めつづけた。面としてイスラム化が浸透した西アフリカと,点と線でしか浸透しなかった東アフリカとの顕著な相違である。従って,スワヒリ語の浸透もその後の植民地化,ミッション教育に負うところが大きい。
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