研究概要 |
「法の同化」についての基本的諸原則については、いわゆる「統一条約」(西ドイツの同家の一体性の回復に関する条約)が定めており、まず統一条約の内容の分析を行なった。旧東ドイツ地域(新たに五つの州として編成されたので「新五州」tunb neue Buudes lauder」とよばれる)の法秩序の再編(法の同化)の具体的問題として、(1)裁判制度の管備、裁判官の審査問題(旧東ドイツの裁判官は各州毎に行われる審査を経て、さらに職務を続けうるか否かが決定される。審査はザフセン州を除いて未だ完了していない),(2)土地・企業の私有化問題(ここには(2)ー1、ソ連占領下=東ドイツ建国前および建国後の社会主義化の過程で国家によって収用された土地,企業を旧所有者に返還する問題と(2)ー2、いわゆる人民所有企業(社会主義的企業)を市場経済にふさわしく私有化すると=第一に資本会社に転換し、第二に私的投資家に売却する=という、二つの問題群がある)を、雑誌、新聞などの材料をつかって、追跡し、分析した。さらに、直接的に「法の同化」問題とはいえないが、統一に関わる重要なイミュ-として、基本法の改正問題についても検討した。統一条約は、統一後2年以内に基本法の必要な見直しを行なうものと規定しており、これをうけて1992年1月に連邦議会と連邦参議院の共同の憲法委員会が設置された。在野でも、旧東ドイツの反体 制改革派の流れを組むグル-プを中心に「新憲法」草案が発表されているが、政府与党は小はばの改正にとどめようとしている。より深刻な問題として、「東ドイツの過去の克服」とよばれる問題があり、これについても若干の分析を試みた。つまり、東ドイツの独裁政党であったSED(ドイツ社会主義統一党)とその治安機関たる国家保安省(シュタ-ジ)のいわゆる「権力犯罪」を法治国家の名において、統一ドイツの裁判所が裁こうという問題である。ここには「法とは何か」という問題が伏在する。
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