研究概要 |
領海における外国船舶の無害通航の問題が,これまで海洋法の研究の一環として研究をつづけてきた。これまでの研究は,昨年,『海洋法と通航権』(日本海洋協会)という書物にまとめて刊行した。本書の第二章は,「領海の無害通航権」として,以前の研究成果を概括的にとり入れた(56頁ー80頁)。(また第三章の「国際海峡の通航制度」も本研究テ-マの一部をなす。) 本書では,無害通航の学説の概要,19世紀のイギリスの裁判例,無害性の判断基準に関する国際司法裁判所の判例,外国の領海における軍艦の通航種問題(とくに国連海洋法会議等における各国の主張と実際の取扱い)等について,簡潔に解説した。 しかし本書の研究は,無害通航に関する体系的な研究ではない。主要な論点に対する,むしろ問題提起としての性格が強い。そのため,本書の刊行後も,本年度の研究量を活用して,さらに必要な資料・文献を集め,それらの分析に努めた。その作業はまだ完成していないが,なるべく早く論文としてまとめて,できれば来年度に発表したいと考えている(北大法学論集を予定)。その論文でとり上げる主な論点は,(一)無害通航制度の形成史,(二)国際海峡の通航問題(従来の「強化された無害通航」,新しい「通過通航制度」,特定海峡の個別条約の制度),(三)軍艦の領海通航の問題(事前の沿岸国の許可ないし通告ないしに通航しうるか否か等)となる。
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