本年度は、実態調査として、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法関連の補償・買取請求、開発負担金・開発における公園負担等、および地区計画による高度制限・壁面後退その他の規制の上乗せを中心として、各地の事例の調査・聞き取りを行った。 これら調査と文献研究を踏まえて、まず第一に、開発利益の公共還元の概念と理念について、一定のまとめを行った。具体的には、イギリスの開発利益公共還元を、その生成期から1985年の開発用地税法廃止にいたるまで、また収用補償・プラニングインと併せて整理することにより、計画作用と開発利益概念とが不可分の関係にあることを明らかにした。あわせて、このようなイギリスの都市農村計画を支える専門職(プランナ-)の位置づけについても一定のまとめをした。引き続いて、わが国の制度も含め、開発利益の概念の整理を、現在試みつつある。 第二に、計画制限における損失補償について、その要否の理論構造の整理を行った。そこでは、損失補償以外の補償措置、および補償額の算定における地域拘束性を考えると、要否の間もかなり連続的であり、必ずしも峻別されものではないことを示すとともに、開発利益と裏腹の関係として構成することにより、さらに明確な方向づけの展開を試みている(1992.4土地法学会関西支部研究会で報告予定。この課題はなお、1992年度に継続する)。 第三に、従来の開発負担金が公益・公益施設整備費をまかなうためであったのを、住環境の整備のためのオ-プンスペ-ス負担として、開発負担の新たなあり方をさぐるとともに、従来の宅地開発指導要網を条例化する可能性をも含めてその法的可能性の検討を行った。 そして、それを踏まえながら、第四に、計画制限の強化・詳細化の可能性について、地区計画を中心に、若干の端緒的研究を行った。
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