研究概要 |
鈴木文書のマイクロフィルム化を行った上で,昭和13年商法改正に関る資料の所蔵を調査した。その結果,鈴木文書に含まれない資料が東京大学にまとまった形で所蔵されていることが判明した。 鈴木文書の他に収集した資料を検討した結果,昭和13年商法改正は,明治期の商法改正とは異なり,企業等経済の要求に応じてなされたことが大きな特徴であることが判明した。すなわち、諸外国の法制を単に模倣する段階から日本の経済の現状に適合した制度の構築を図る段階に進んだことが明らかになった。とりわけ、東京商工会議所の商事関係法規改正準備委員会が昭和13年改正に果した役割は大きく,準備委員会における審議過程に関する資料の収集が今後の課題である。法制審議会,商法改正委員会における議論については、鈴木文書および東京大学所蔵の資料により,ある程度判明するが,中でも,鈴木文書中の鈴木博士の書き込みは,議論の推移を推測する重要な手がかりとなる。 国会における審議については、衆議院および貴族院の本会議議事録,委員会議事速記録により知りうるが、昭和10年,13年の2回にわたって改正法案が提出されており,法案内容の変化について,資料の収集を行う必要が認識されたが,これについては現在のところ資料の存在が判明しておらず,来年度以降,調査・収集を行う必要がある。 昭和13年商法の立案過程で問題とされた点は平成2年商法改正でとりあげられた問題点と類似しており、経済の要求に応える過程を長期的に分析する視座を得ることができる。
|