研究概要 |
平成三年度には,先進諸国における年金制度と出生率,そして景気循環の関連性を調査した。平成四年度には年金を含む経済動学モデルで,出生率の内生的決定のメカニズムを検討した。モデルの妥当性と,分折の方法については,学会等での発表を通じて,我国内外の研究者との議論を通じて,論文としてまとめてきた。 この研究の目的の一つは,年金に代表される社会保障が行われることが,社会的にも望ましいモデルの作成である。しかも出生率が内生的に決定されるモデルである。社会保障が社会的にも望ましい為には,ある世代が何らかの形で,その親の老後の生活に関心を持っていることが必要となる。また,彼らは,自分達の老後が,子供達の世代から徴集された税金で,賄われる年金で支えられることを知っている。従って,この世代が生む子供の数が将来の年金額にもたらす影響も知られているとする。 このようなモデルでは,社会保障の導入が出生率を低めることが明らかになる。そして,社会保障を導入することによって,社会的な厚生も向上するのである。 以上の結果は,従来の研究の結果といくつかの点で異なっている。従来のこの分野では,社会保障を導入すると,社会的厚生が低下するというのが通常であった。また,出生率は,外生的な与件とするのが通常であったので,出生率への影響は分折されていなかった。 本研究の目的の一つである経済成長については,いくつかの論文にまとめることができた。しかし,資本市場を含めたモデルでの利子率と,公的年金,出生率の関係は十分に研究できたとはいえない。この点は,将来の研究によって明らかにするつもりである。
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