研究概要 |
平均及び分散の変化時点を発見する逐次的方法の理論的研究に於いてブラウン運動にもとずく近似計算と正規ランダムウォークにもとずく近似計算の双方について研究を行ってきた。ブラウン運動による近似法は数値計算の手法としてはその近似精度に問題があることが過去より指摘されてきているため、本研究では出来得る限り正規ランダムウォークによる近似計算を中心に考察を進めてきた、そこで特に以下の3方法について過去2年間研究を進めてきた。(i)Takahashi(1987)Ann.Statists.の方法、(ii)Siegmundにより提示されたLast time に基づく方法、(iii)Woodroofe(1985)Ann.Statists.によるvery weak expansion を用いる方法である。その結果(i)及び(iii)が本問題の解決には最も有効であろうという結論を得るに至った。特に最終年度に於いては主に(i)の方法の精密化を行ってきた。前年度では停止時刻を含む標本平均値の期待値の漸近展開は1/a^<3/2>のオーダ迄求められ、一応満足すべき結果は得られていた。しかしながらそこでの計算結果に基づく近似式とモンテカルロ数値実験を比較すると、残念ながらあまり思わしい結果とはいいがたい側面があった為より精密な分析を行う必要が生じてきた。その結果実は1/√aのオーダーに於いて、(与えられた標本数の上限値m=aθoに対し)標本数の平均値N=aθの小数部分ρを含む新たな修正項を持つことを考慮する必要が生じてきた。昨年度までの段階ではaθoのみを考察してきた故、それを整数にするようなaのみを考えれば十分であったが、今年度は両者共に考察する必要が生じてきたからである。ごく特別な場合にはN,mを共に整数とするようなaが存在するが一般にはもちろん存在し得ない。それらの結果は"Asymptotic Expansions for Er{min(t,m)}and Er{Xmin(t,m)}"にある。 次にWoodroofeによるVery Weak Expansionのこの問題に対する応用である。大筋では答は求まっているが、展開の数学的な正当生にまだ完全には成功していない。この問題に対する最初の論文は今年の夏以降に出来上がる予定である。一方株式市場に於ける実証研究は田窪、田中両氏の協力のもとで大きく進んだ。ここで行った研究は、ある意味でAPTの実証研究であり本研究とは直接的には関係しないが、株価の基本分布の研究という意味に於いてアメリカ型オプション価格理論への重要な予備的研究である。
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