研究概要 |
分布関数とその汎関数である密度関数や確率関数,積率母関数等はパラメトリック,ノンパラメトリックを問わず,統計的推測で重要な役割を果たしている。本研究は分布関数とその汎関数の推定・検定の理論と方法を発展させることを目的とした。代表者と分担者は共同で,もしくは単独で多数の論文を発表し,以下の成果を挙げた。1.分布関数のkernel型推定量と経験分布関数では,積分平均2乗誤差ではkernel型推定量が優れているが,これは平均が0である部分を無視するためであり,両者で本質的な差はない。したがって,連続性を重視すればkernel型推定量,単純さと計算の容易さを重視すれば経験分布関数を用いるべきである。2.kernel型推定量では,kernel関数と平滑化パラメータを選択しなければならないが,kernel関数は数定精度にあまり影響せず,平滑化パラメータの選択が重要である。パラメータ選択のために誤差を推定しなければならないが,そのためにbootstrap法が有効である。3.分布関数の信頼帯は,従来では経験分布関数と分布関数の差の絶対値のsupが用いられていたが,これは分布の端の方で精度が低い。端で精度が上がるような構成法を提案した。また,信頼限界をbootstrap法で推定する方法を検討し,離散分布ではbootstrap法が有効であることを示した。4.分布型の適合度検定ではいろいろの手法が知られているが,データのグラフ表現や分布の特徴付けに基づく検定統計量を構成し,その漸近分布や検出力を検討した。漸近分布はカイ2乗確率変数の重み付きの和の形になる。5.時系列分析や非線形回帰モデルにおける推定量や検定統計量の2次,3次の漸近分布を考察し,漸近相対効率を導いた。6.order kの2項分布,負の2項分布の拡張を考察し,さらに2値のマルコフ連鎖における長さkの連や待ち時間の積率母関数,分散の簡単な表現等を導いた。
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