研究概要 |
本研究(日本の小売市場の競争構造に関する理論的・実証的研究)は,2つの部分から構成されている.ひとつは,国際比較を通じた日本の小売構造の特微を検討することであり,もうひとつは,日本の小売市場の競争構造に見られる問題点を検討することである。 (1)小売市場の構造に関する国際比較の部分では,小売業の規模,店舗密度,集中酸,生産性,小売業における組織化の程度と方法といった角度から,日本の小売構造の特微を明らかにした.日本の小売構造は小規模な店舗が多数存在するという「小規模・分散性」の特微を持つことが確認されたが,この点を小売市場の空間競争モデルをもちいて分析した.日本の小売の小規模・分散性という特微は,消費者の多頻度・小口購入という購買行動や小売業者の販売活動と密接に関連しており,それらは消費者の家庭内在庫費用と買物の移動コストおよび,卸と小売業者との取引における小売業者の発注コストと在庫費用とによって大きく規定されているを明らかにした. (2)日本の小売市場は小規模・分散性の特微をもつが,数の上では少ないものの大規模店舗が大きな販売シェアを確保しており,この意味で2極分化の傾向が見られる.そうして,日本では小売業の生産性の規模格差が著しく,また多店舗店の単独店との生産性の格差も著しいことが国際比較を通じて明らかにされた.生産性格差は競争を通じて平準化されると考えるならば,こうした生産性格差の存在は,日本の流通段階における競争が,大規模小売店舗法による出店規制によって大きく制約されてきたことを伺わせる.本研究では,この点について,大店法の運用実態や,参入阻止ゲ-ムの競争構造を検討し,商業集績の利益と利益分配をめぐって参入規制がブ-ツ・ストラップの停滞を導いていることを明らかにした.
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