研究課題/領域番号 |
03630033
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
経済事情・政策学
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
栗田 健 明治大学, 商学部, 教授 (10061855)
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研究期間 (年度) |
1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1991年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 賃金 / 年功賃金 / 終身雇用 / 経営家族主義 / 企業別組合 / 能力主義管理 / 労務管理 / 昇進 |
研究概要 |
第一次大戦後の日本労使関係は、欧米にならって団体交渉制度を機軸とする全面的な制度的改革を経ることによって、経営家族主義と規定される戦前の労働者統括原理を払拭したが、その大きな制度的変化にもかかわらず、実質的な雇用関係は転換されることがなかった。ここに第1の論点として、日本的雇用関係をそれほど強く定着させた社会的構造のあり方の解明の問題が提起されるが、これを労働者の価値観と行動様式の日本的態様として組織志向型と規定し、社会的階層移動にその動態的な要因を見いだした。第2の論点はこの構造を維持する機構のあり方であり、年功賃金はその機軸として位置づけられる。本研究が主として取り上げたのは、年功賃金のこの役割が、戦後の経営労務の変化に対応してどのように変わったかという問題を、この賃金制度の日本的雇用関係を維持するものとしての機能を中心に分析することである。 年功賃金の役割の変化は、(1)戦後期、(2)経営再建期、(3)経済自立期、(4)設備投資型成長期、(5)輸出(規模拡大)型成長期、(6)減量経営期、(7)高度技術化期などの経営の変革にともなって起こっているが、この間に年功賃金の職能給化が着実に進行し、経営並びに現場管理者による査定の範囲の拡大と査定機能の集中化が生み出されている。しかしこの職能給化は賃金形態の欧米化を意味するものではなく、「職能」という新たな労働者類型概念の形成を伴った点で、組織志向型の様式的変化として把握すべき特質を備えている。同時にこの変化は、労働市場の変動と相関して労働者の社会階層移動にも変化を与えており、この側面での賃金の年功性の希釈化は、組織志向型の基盤を動揺させるものとして変革的な意義を見いだすべき変化である。この両側面がどのように共存し労働者間秩序を維持しているかを明らかにするために、雇用制度の変化と賃金制度の変化の相関関係を研究することが今後の課題である。
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