耐久財の独占市場では、利潤を最大にするような独占価格もつねに成立するわけではないという、非耐久財とは違った固有の問題が存在する。耐久財の独占者にまとわるこのような困難を、「コ-スの推測」とよんでいる。本研究では、異なった市場構造のもとで「コ-スの推測」がどのような形をとるかを検討し、賃貸借と競争や効率性とのかかわりや、賃貸に関する競争政策の意義について考えてきた。 「コ-スの推測」はその後ビュ-ロウ、スト-キ-、ボンド=サミュエルソンなどによって数学的に厳密な証明が行われた。これらのモデルの検討を通じて、どのような技術条件のもとで「コ-スの推測」が成立するかを明かにした。そして賃貸借という取引形態はそのような売り手にとっての困難を回避し、技術条件にかかわらず自らの市場支配力を維持して利潤最大化を実現するための役割を果たしていることを示した。 すなわち、本来「コ-スの推測」がはたらく可能性のある耐久財市場でも、賃貸借が行われると、非耐久財市場と同様の市場支配力の問題が発生することを明かにした。このような議論から、賃貸借取引には独占禁止政策の上から注意しなれればならない問題があることを示した。これらの成果については別掲の論文、および関西経済法研究会(平成4年2月1日、於・公正取引委員会近畿事務所)で発表した。 また、このような理論的に得られら仮説を実証的に検討するため、コンピュ-タ産業および航空機産業でインタビュ-調査と資料収集をおこなった。引き続きこれからのデ-タに基づき計量分析を行う予定である。
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