研究概要 |
我が国のソフトウェア企業は、メ-カ-系、独立系、ユ-ザ-系、の3群に分類することができるが、本年度の調査研究は、主としてAメ-カ-系のソフトウェア会社B社に関連する下請企業での労務管理の実態に、その中心が置かれた。B社の協力会は、平成2年3月現在付の入手資料によると、21社によって構成され、資本金規模は5百万円から8千万円で平均は2千8百万円、取引開始年は昭和47年から59年で昭和55年以前が67%を占めている。プログラマ人員規模は42人から657人で平均は168人、また21社全体で3,459人で、その内B社に出向している総数は1,504人で全体の43.5%を占めている。出向比率が70%を超えている企業は11社、10%以下が3社であった。以下、こうした下請業での労務管理上の主要な傾向的特質を、紙幅の制約から3点に限定して列記する。 (1)賃金体系は親企業のものと基本的に同一であるが、福利厚生面では相当の差異が認められる。資格職能給が形式的に導入されていたとしても、実質的には学歴・年功給となっており、有能な若年労働者に不満がみられる。 (2)新人の教育訓練期間は数週間のものが多く、自前でカリキュラムを殆んど持つことはない。親企業に経費を払って人材育生を任せている。CDPを有するところがなく、将来に対する不安がみられる。また、企業独自の技能養成が困難なところから処遇に不満を持つ中堅技術者が離脱する傾向があり、労働移動率は5〜7%程度である。 (3)請負化の進展のために、親企業は加工外注制度(下請社員のみのプロジェクトチ-ム)を設けているが、作業量の6割程度で、残りの4割は直接的な指揮者が親企業社員の作業チ-ムである。加工外注では、工程管理と、品質管理は任されても、原価管理は親企業が行うので、実質的な管理者が養成できない。
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