研究概要 |
(1)研究期間中に,日本学術振興会特定国派遣によりドイツ連邦共和国のザ-ルランド大学に2カ月間の留学をする機会を得た。この間,銀行経営・銀行会計の専門家として著名な同大学のビ-ク教授(Professor Dr.Hartmut Bieg)のもとで,ヨ-ロッパ共同体理事会の銀行指令の研究ならびに関係する文献資料の調査にあたった。 (2)ヨ-ロッパ共同体域内の金融統合のプロセスは,域内の相互主義の原則のもとに,各加盟国内の銀行監督の調整にはじまり,このための銀行調整指令が2次にわたってだされている。さらに,銀行の自己資本比率の国際決済銀行の基準の遵守など,自己資本と信用リスクの認識が大きなテ-マであり,この間,このことについて,ヨ-ロッパ共同体指令の研究に専念した。 (3)ヨ-ロッパ共同体域内の金融統合,銀行調整のいまひとつの柱は,域内の銀行の財務諸表の比較可能性の改善にある。このため,銀行指令とリンク指せるかたちで,1988年にヨ-ロッパ共同体の銀行会計指令が出された。この銀行会計指令は,財務諸表のデ-タの比較により,銀行の国際化に伴い,域内の多様な利害関係者が有用な意思決定をおこなうことができることをもとめた。加盟国の国内法の改正がこれにより促されたが,ドイツ連邦共和国の場合,指令の変換法として,1990年にドイツ商法典の改正がなされた。この間,銀行会計指令の研究に従事した。 (4)以上から,ヨ-ロッパ共同体の銀行指令・銀行会計指令の全体について,文献研究をすすめ,それがドイツの銀行経営・銀行会計にどう影響を及すかについて研究をふかめることができ,科学研究費による3カ年計画の初年度目標を達成した。また,具体的な成果としては,ヨ-ロッパ共同体の銀行会計指令に定められた現代会計の一つである「債券現先オペ取引」(Pensionsgeschafte)の会計基準の形成に関して,論稿を公にすることができた。
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