研究概要 |
本研究では多様体上の種々の大域的な幾何学的構造とこれに関連する諸問題について多面的な研究がなされた。その成果の主なものについて論文リストの順に解説する。 [1],[2]ではそれぞれ,実および複素2平面のなすグラスマン多様体について,その上のあるテンソル微分作用素の固有分解を求めることにより,ラドン変換を媒体として,これらの上の不変微分作用素環の生成元と固有分解が具体的に求められている。 [3]では,線織多様体の上の極値的なケーラー計量について,いくつかの場合に,その存在と一意性のための必要十分条件が求められており,モジュライ問題の観点からも,存在と一意性の間に一般的に興味ある関連が存在することが示されている。 [4]では,コンパクト複素多様体のザリスキ開集合であるケーラー多様体とその上の正則エルミートベクトル束について,適当な条件の下で,L^2ドルボー補題が示され,その応用として,階数1の局所有界対称領域のトロイダルコンパクト化の変形に関する剛性と,上のようなザリスキ開集合上に負のスカラー極率を持つケーラー・アインシュタイン計量が存在するための従来の必要条件が十分条件でもあることが示されている。 [5],[6]では,力学系の数値実験の手法を数論の分野に適用して,ある種の無理数のディオファントス近似による有理度の問題が研究されている。この研究では計算機による数値予測の有効性が示されており,数学研究の新しい方向を示している。
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