研究概要 |
クレイン空間は,通常の意味の内積を持つヒルベルト空間であって,さらに自己共役なユニタリ作用素Jによってい決まる不定内積が付与されているものである。この研究では,クレイン空間の作用素をヒルベルト空間の作用素と対比して解析し,前者にない性質を利用して,種々の問題の解決にあたることを目的とした。以下に本研究で得られた主要な成果について述べる。 1.安藤は,クレイン空間のJーユニタリ作用素の構造の解明を基に,行列のある種の凸集合のすべての端点の解析的表示に成功した。また,強Parrot型の伸張定理に新しいアプロ-チを見いだした。 2.中路は,高橋と協力して,クレイン空間での方法を使って,CotlarーSadofsky型の新しい伸張定理を確立し,それをHankel作用素に関連する荷重付き積分不等式に応用した。また多重円板でのL^2空間での移動作用素の不変部分空間の構造決定を行なった。これはシステム論での実現理論と関連する。 3.中村は,de Brange分解の連続パラメ-タ-への拡張を試みた。また,Horn等と協力して,ユニタリ不変なノルムに関する種々の不等式を導出した。 平成3年6月11日より6月14日まで,研究代表者安藤は,国際シンポジュウム「作用素論と複素解析」を主催したが,その中でクレイン空間に関する問題は主要テ-マの一つで,世界各地からこの分野の多数の研究者を集め討論した。またその直後に神戸で開催された国際会議「回路網とシステムの数学的理論」でシステム理論と関連する問題を検討した。また,11月には,国内の「作用素論・作用素環研究集会」で,クレイン空間に関しての討論を行なった。
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