研究概要 |
1.境界値問題や混合問題に限らず一般に線形偏微分方程式系の超局所解析において解の第2解析的特異性を調べることが重要であるが,種々の問題で柏原・河合による包合的多様体に沿う第2解析的特異スペクトラムの理論では説明し切れない現象があることがわかった。一方,仏のLebeauは既に,より微細な概念である陪特性帯に沿う第2特異スペクトラムを定義していたが佐藤超函数の枠内での意味は不明であった。研究代表者らはこのスペクトラムの定義函数による同値な表現を発見し,包合的な場合とのつながりも見い出した。特に,いわゆるPー解析性という,正則パラメ-タをもたないが一意接続性をもつマイクロ函数の性質を発見した。2.小松は調和函数とポアソン積分を用いる超局所解析の新しい基礎づけに対し,若干の補いを行った。またベクトル値ラプラス超函数の理論を整備した。3.岩崎はリ-マン面上のフックス型微分方程式のなすモジュライ空間の構成をおこない,その空間のポアソン幾何的研究をおこなった。更にモジュライを空間上にモノドロミ-保存葉層構造を定義し,それを記述する完全積分ハミルトン方程式系を導出した。更にこの方程式がハミルトン系なる内在的理由をコホモロジカルに説明した。4.片岡は微分方程式系からその導来系への自然な射をある種の分解を用いて具体的に表現することに成功した。これは混合問題の解析の際得られた,微分加群のHeaviside函数による切断操作に基づくものである。
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