研究概要 |
関数微分方程式とくに差分微分方程式の境界値問題について研究を行い,チェビェフ多項式を基底関数とするガレルキン法により近似解を構成するアルゴリズムをまず開発し,さらにその近似解についていくつかの条件をチェックすることにより,近似解の近くに厳密解の存在を保罪する存在定理を証明し,合せて誤差限界を与える評価式を導した。前者については,近似解を初期関数の定義域の区間と差分微分方程式の定義域の区間で各々定義された2つの未知関数を導入し,各区間をチェビシェフ多項式の定義域に変数変換した上で,各々未知関数のチェビシェフ多項式展開級数の未定係数に関する代数的連立方程式を導いた。後者については,線形差分微分方程式の基本行列を用いて線形方程式の境界値問題をある種の積分方程式に変形し,再構成されたリ-スの理論を適用して存在定理を証明している。上記の一連の理論について2・3例をあげて応用し,数式処理実験及び数値実験を行った。この成果は,指導下にあった大学院生の修士論文の形で発表した。 一方,複素領域上の連立線形常微分方程式の特異点について研究し,とくに形式上2位以上の極をもつ関数を係数とする方程式に関し,ジュルカットの方法により確定特異点を解としてもつ場合の判定を行い,さらにホルン型変換により1位の極をもつ方程式に変換し,その基本行列を構成するアルゴリズムを数式処理技法によりコンピュ-タ上にソフトウェアとして実現した。同時に2・3例により数式処理実験を行ってその有効性を検証した。この成果も大学院生の修士論文としてまとめた。 研究分担者独自の研究としても各々発展させ,数論の分野と固有値問題の分野で一定の成果をあげた。
|