研究概要 |
1.常微分方程式数値解法公式に高速自動微分法をとり入れた算法の開発 (1)陽的Runge-Kutta法に2階の微分係数をとり入れた公式について検討した。その結果,誤差推定能力を持つ埋め込み型公式は,2段数(3)4次公式に限られることを明らかにした。さらに高次の公式については,局所打切り誤差の観点から最適な5次公式と6次公式を導いた。 (2)予測子-修正子法について1段階法のEuler-台形側の修正子法に1回だけNewton法を組み込んだいわゆるRosenbrock法についてNewton法に必要なJacobi行列の計算に高速自動微分法をとり入れる。この方法についての計算量の比較等については現在継続中である。 2.数値積分への高速自動微分法の応用 特異性がない関数の数値積分に広く用いられているRomberg積分に,両端点における微分係数をとり入れた公式について,とり入れる微分係数の次数と手間の関係について詳細な解析を行なった。その結果積分の両端点における1階の微分係数を用いたものが,手間の面で最も効率が良いことをあきらかにした。この公式の精度は,従来のRomberg積分で刻み幅を半分にしなければ得られない精度を達成することができる。 3.陰関数で表された空間内の面の交又判定への応用 数値計算で得られる結果の精度を保証するのに従来用いられてきたいわゆる区間演算によるものは,その解の存在範囲が極端に拡大され実用に耐えるとはいいがたいものがある。高速自動微分法によって得られる情報を用いれば結果の精度の正確なかつ実用的な保証が得られる。空間内の曲面の交又の判定に用いられている区間演算に代えて,この高速自動微分法をとり入れた算法について現在研究を継続中である。
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