研究概要 |
1.(i)長田は、(G,H)ーセルフラクタルという自己相似フラクタルのクラスを考案した。ここで(G,H)と記したのは、各フラクタルに働く変換群を表すものだが、このフラクタルの上に、(G,H)ー不変な自己相似拡散過程が存在するための十分条件を発見し上記の拡散過程の構成を行った。 (ii)この十分条件とは次のようなものである。今、その上に(G_2,H_2)ー自己相似拡散過程が存在するセルフラクタルが与えられているとする。このとき、別の(G_1,H_1)ーセルフラクタルF_1からF_2への良い全射ζが存在する、というのが十分条件である。ただし、良い全射とは、ζによって引きおこされた、(G_1,H_1)上の群準同型ζ_*のKerζ_*'が、(荒くいって)F_1上に推移的に働くというような全射である。例えば、F_2として2次元シェルピンスキ-カ-ペット等をとることにより、この結果から様々なinfinite ramified fractal上に自己相似拡散過程を構成することができた。 2.小谷は、単連結、完備、非正曲率をもったリ-マン多様体上のラプラシアンのスペクトルの上限が負になるための十分条件をリッチ曲率の言葉で与えた。これによると、リッチ曲率が平坦な部分があっても、任意の測地線が負の部分に触れる程であれば、上限は負になることがわかるということが得られた。 3.フラクタル上のブラウン運動は、R^nのそれと根本的にちがうものになるというのがこの分野の興味深い点である。フラクタルは、ある意味で理想的に退化した多様体である。今後の課題としてフラクタルリ-マン多様体と呼ぶべきものを作り上げ、その上の現象がリ-マン幾何と根本的に違ったものになれば面白いと思われる。
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