研究概要 |
流体力学極限の問題をGinzburgーLandauモデル及び排除過程に対し研究した。前者は,d次元空間R^d上に分布する連続体のランダムな時間発展を与えるモデルである。流体力学極限の問題を扱うための準備として、その平衡状態の構成,特徴付け,エルゴ-ド性の証明等を行った。そこではスカラ-場のみを対象としたが,スピン場のとり得る値の空間が多様体をなすと考えた方がより一般的である。例えばHeisenberyモデルや非線形σモデルがその典型例である。このような場合も同時に扱うために,多様体に値をとる確率偏微分方程式を導入し,その解の存在と一意性,正則性等を示した。これはル-プ空間上の拡散過程の例も与える。一方後者の排除過程とは,格子点を相互作用しながら動く多数の酔歩系のモデルである。拡散型の時空のスケ-ル変換の下で,粒子系の密度場に対し大数の法則が成立し極限は非線形拡散方程式によって記述されることを証明した。粒子の飛び確率に基づく拡散係数の具体的表示も同時に与えた。 関連した問題として低温極限の問題を考察した。GinzburgーLandauモデルの自己ポテンシャルが2つの底をもつ場合,対応するハミルトニアンの基底状態は一意的でない。それは無限次元空間内の有限次元部分多様体をなす。温度パラメ-タ-を0に近づけるとこ,無限次元の確率過程がこの部分多様体上の拡散過程に収束することを示した。これはDirichlet形式の観点から言えば対称測度が退化する場合を扱ったことに相当する。基確の空間が最初から有限次元多様体であっても,この問題は余り評しく調べられていなかった。更に,有限固の点集合に退化する場合も興味深い。そのためにWentzellーFreidlin型拡散過程のある領域からの平均脱出時刻を考え,その詳しい漸近展開を与える公式を導いた。あるいは,大偏差原理に対する補正項を与えたと言ってもよい。
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