研究概要 |
レヴィのブラウン運動やフラクショナル・ブラウン運動のような正規型確率場を研究すると、保々のガウス過程が現れる。多次元パラメ-タの動きにつれて観測される確率場X(x)の変動(この解析が我々の主たる研究目的)を、いくつかの方向に分けて調べるという立場にたてば、自然に次が導かれる:(i)半径tの球面上でX(x)を加重平均してM(t)ー過程を得る。(ii)曲線Cを選びxをC上に制限して走らせるもう一つの考え方ーこうして得られるガウス過程X_C(t)に対し、Cの微少切片に応ずる変分量の解析(確率変分方程式)、及び法線方向への微少変形から定まる変分問題に、我々は興味をもつ。この方向への第一歩として、伊藤・飛田編の論文集「Gaussian Random Fields」(World Scientific)に発表した研究代表者の論文(レヴィのブラウン運動に対して直線からの微少変形を論じた)がある。この研究を線形加法的確率場へ拡張することを試み、小さからぬ収積を得た。フラクショナル・ブラウン運動へとさらなる飛躍を計りたい。さて我には、上述の立場からできるだけ広い枠組でガウス過程を解明したい。このための鍵は、標準表現X(t)=∫^t_oF(t,u)dB(u)であり、それと等価な確率伊藤=ヴォルテラ方程式X(t)=∫^t_oK(t,u)X(u)du+∫^t_oJ(t,u)dB(u)である。これまでの成果は次の通り:(i)多重マルコフの範囲内でJ≡1を保証する仮定をおき、二階線形微分方程式を解いて核FとKを求めることに成功。二重マルコフならば、これはピットと同水準の結果であるが、我々の方法は線形性と適用範囲の広さを有する。特に、岡部がKM_2Oーランジュバン方程式の名で扱った定常過程を取り上げ、研究発表欄に記載した論文で詳細な構造を記述した。(ii)J(t,u)=(t-u)^aととるべき過程に、フラクショナル・ブラウン運動から導かれるM(t)がある。部分的な解答を得ているが、十分な展開は今後の課題である。
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