本研究の目的は、われわれの銀河系のバルジの三次元構造及びその運動を:バルジに属する赤外線星の観測に基いて解析する事である。このため、本年度は、昨年度に引続き、野辺山45m電波望遠鏡を用いバルジ赤外線星からの一酸化珪素メーザーの探査を計画した。幸い、我々の観測計画は、野辺山共同利用観測長時間観測プロジェクトに採用され、多数の星を観測する事ができた。現在までに、186天体の観測を行い、124天体からのメーザーを検出した。検出率は67%である。メーザーの視線速度は、数km/secの精度で恒星本体のそれと一致する事も知られている。視線速度の解析から、バルジの回転速度として、9.3±1.4km/sec/deg.という値を得た。又、銀緯による回転速度の変化も検出された。回転速度は銀河面から遠ざかるに連れて小さくなる事も判った。前年度に得たバルジの形状が三軸不等という結果とこの微分回転を共存させるためには、剛体回転にバルジの内部運動が伴わなければならない。内部運動解析には、個々の星の空間位置を知る必要がある。そのために、昨年に引続き、南アフリカ天文台においてバルジ星の赤外測光観測を行った。星の距離決定には、ミラ型星の光度周期関係を用いる予定である。現在までに、約90星に対し、2回の観測が行われている。距離決定にはあと3回程度の観測が必要であろう。 以上のように、我々は今回の研究を通じ、バルジの回転速度を求めたのみならず、内部運動の検出にも成功した。又、個々の星の距離を求めるための赤外観測も、着実に進展しつつある。
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