研究概要 |
X線検出器のデジタル波形処理による低雑音化が本研究の目標である。科学研究費補助金の支給が決定されたのが平成3年末であったため,今年度は主として予備的な研究を行った。 一点は,従来より実験を行ってきたX線撮像型CCDについて,信号出力用のアナログ-デジタル変換回路を作製し,デジタル信号をパーソナルコンピュータに取り込むシステムを完成させたことである。 検出器の近傍で信号をデジタル化することにより大型真空槽等,長距離の信号伝送が必要な状況においてもS/N比を劣化させることなく測定ができるようになった。 同時にここで使用した回路はデジタル波形処理の回路を作製する際の基礎となるものと考える。 第二点は,デジタルストレージ型オシロスコープを使用して検出器の信号波形を採取しコンピュータにデータとして蓄えるシステムを完成したことである。 現在,実際に比例計数管のプリアンプ出力を取り込みそのデータを解析している。 平成4年3月末には高エネルギー物理学研究所フォトンファクトリーにおいて高い偏光度をもったX線ビームを比例計数管に照射して,比例計数管の芯線と偏光方向の関係によって(偏光方向によって検出器中で生成される電子雲の方向分布が変ってくることが予想される)信号波形が異なるかどうか検証したい。 もし有意な差異が観測されれば新しい型のX線偏光度検出器の開発につながるはずである。 来年度は,まずこのようにして取得した信号波形の詳細な解析を行った上で波形処理の方法を具体的に検討し,最終的には検出器(比例計数管)用の専用波形処理回路を製作しシステムとして完成させたい。
|