研究概要 |
希地類セリウムと銅の化合物CeCu_2は、しわゆる重い伝導電子を持つ重フェルミオン化合物でありT_N=3.5Kに反強磁性磁気秩序転移を持っている。この化合物の単結晶の各結晶軸方向に磁場を加えて比熱測定を行い、磁気相図を決定した。さらに単結晶帯磁率の測定デ-タを解析し、斜方晶系の五個の結晶場方数を決定した。 1)磁場中比熱の測定 aー軸:反強磁性のλピ-クの位置は磁場を増加するにつれ、温度は3.5Kから急速に低温側にシフトし、およびそのピ-ク値は減少し、遂には2.0Tの磁場で消失する。この変化はaー軸の磁化測定で既に測定されているメタ磁性転移と一致している。2T以上でλ比熱はショットキ-型に変わり、そのピ-クは磁場の増加と共に高温側に移動する。 bー軸:3.5Kのλピ-クは6Tまでその形、位置は変わらない。 cー軸:反強磁性のλピ-クの位置は磁場が増加するにつれ、3.5Kからやや低温側にシフトするが、そのピ-ク値は約2Tの磁場まで変わらない。さらに予想されなかった新たな相転移のピ-クを2T以上で観測した。この新たな比熱のピ-クは磁場の増加とともに逆に高温側のシフトし、ピ-ク値も増大し、約6Tにおいては、低温側にシフトしてきたλピ-クと重なり鋭い単ピ-クとなる。 2)結晶場の解析 0.6Kから300KまでのCeCu_2単結晶の帯磁率の測定デ-タに合うように、斜方晶系の五個の結晶場変数を決定した。それらは、B^0_2=-4K,B^2_2=-32K,B^0_4=-0.2K,B^2_4=0.2K,B^4_4=-0.9Kである。この結晶場変数から求めた結晶場エネルギ-は、第一励起状態は135K,第二励起状態は274Kと中性子散乱の結果よりもやや大きい結果を得た。これらの結晶場変数を用いて液体ヘリウム温度付近における異方的磁化の磁場依存性を計算し実験結果と比較した。その結果、計算値は測定値よりも大きく、a,b,cの三軸方向とも、それの約80%とすると一致することとがわかった。我々はさらに、CeCu_2の反強磁性相における異方的磁化の磁場変化をも計算し、重フェルミオン系における近藤効果とスピン相関との関わりについて考察する。
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