研究概要 |
磁気誘起一次相転移によって形成される秩序相の時間発展の様子を調べるために、反強磁性ー勉磁性転移を示すメタ磁性体FeTiO_3及びそのランダム希釈化合物Fe_1ー_xMg_xTiO_3を対象として、メタ磁性転移点近傍での磁場急変に伴う磁化の時間変化を測定した。研究経過は以下の通りである。 1、磁場誘起一次相転移を示す酸化物反勉磁性体FeTiO_3及びFeをMgで一部置換したランダム希釈系混晶Fe_<1ーx>Mg_xTiO_3について、赤外線集中加熱炉を用いた浮遊帯溶融法によりx=0,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,の組成の試料について単結晶を育成した。磁気相転移に特有な現象である反磁場効果がカイネティクスに及ぼす影響を調べるため、試料の形状はできるだけ真球度の高い球形のもの、針状のもの、及び円盤状のものを用意した。 2、1.5Kから10Kの間の種々の温度において、外部磁場をメタ磁性転移磁場H_c(x=0では約80k0e)の直下(直上)の値H_oから、H_eを上回る(下回る)値H_fまで、最大1.5MOe/secの掃引速度で急変させた後の磁化の時間変化を、試料振動型磁化測定装置を用いて測定した。その結果、x=0の場合では磁化の時間発展の速度が、試料温度及び非平衝度|H_fーH_e|に非常に敏感であることがわかった。すなわち、10KではH_fの値に依らず磁場急変後数秒以内に相転移が完了するのに対して、1.5KではH_f=82.3kOeのとき急変後20分の時点においても、新しい相(強磁性相)の体積比は20%以下と、転移の進行が温度下降と共に急激に遅くなった。 3.これらの実験結果について、いわゆる核生成・成長モデルを適用した数値計算と比較することによって解析を行った。その結果このような系においては、反磁場効果の取り扱いが非常に重要であることが明らかになった。
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