研究概要 |
今日の光エレクトロニクスの進展に関連して,広範囲の波長領域にわたり同調可能で長期安定性に優れた固体レーザーの開発が強く望まれている。最近,BaF_2,RbF等のイオン結晶において,価電子帯電子とそのすぐ下に位置する内殻正孔との再結合による発光(オージェ・フリー発光)が見い出された。この発光遷移過では,内殻準位の電離に際して両状態間で容易に分布反転が形成されることになる。本研究計画は,この分布反転に伴う紫外レーザー発振の観測を試みることを目的として行われた。研究は平成3〜4年度にわたって実施された。 1.分布反転を実現するため光共振器を製作した。幾つかの試作品の後,誘導体ミラーと石英板からなる光共振器を完成した。そして,それを光学測定用超高真空槽の中に設置し,レーザー発振の実験に供した。 2.実験に用いるイオン結晶中の不純物の有無を購入した分光光度計で詳しく調ベた。その結果,試料は不純物の含有量が少なく高品位であることが確かめられた。 3.実験は,ポンピング光源として国立共同研究機構分子科学研究所のシンクロトロン放射の強力なアンジュレーター光を利用することにより行なった。そして,レーザー発振に伴う光増幅の有無・発光スペクトル幅の狭帯域化・発光寿命の短縮化を測定した。 以上の結果,価電子帯と内殻準位間での分布反転とそれによる紫外レーザー発振の実現に成功した。これらの成果は,論文として直ちに発表した。
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