研究概要 |
セリウムやサマリウムを含む近藤化合物は、一般に低温において希薄近藤散乱による電気抵抗増加を示すが、より低温に干渉性近藤散乱、または、重い電子状態の生成による電気抵抗減少が見られる場合。また、磁気秩序の発生に伴い電気抵抗が急激に減少する場合も多い。更に、磁気秩序発生の場合には、この転移温度の付近で臨界散乱による鋭い電気抵抗のピークを生じる場合もある。またCeNiSn化合物で見られるように、低温でエネルギーギャップが生じ、電気抵抗が半導体的に増加する場合もある。このように、近藤化合物の電気抵抗は低温領域で多彩で興味ある温度変化を示す。逆に、電気抵抗だけでは、その異常な温度変化の原因を定めることはできないことにもなる。我々の目的は、高次の輸送現象である熱電能の測定を電気抵抗測定と合わせて系統的に行い、統一した理解を得ることである。 本研究において、今迄あまり研究されたことがなかったCeT×(T=Ni,Pd,Pt;X=Sn,In,Ge)など、多数の二元、または三元化合物を試作し、その電気抵抗と熱電能の測定を行った。得られた結果は変化に富み、各々の化合物の4f電子の個性的な挙動を特徴ずけるものであった。低温領域の熱電能は電子比熱と密接な関係があることを実験的に明らかにしたことは、重い電子状態と関連して興味があると考えている。また、反強磁性または強磁性を示す近藤化合物が転移温度の近傍で、熱電能と電気抵抗のどのような異常を示すものがあるかについて明らかにすることができたのも成果であった。しかし、サマリウム化合物については近藤化合物が余り多数見出すことができなかったので、今後の課題として残される面が多い。
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