研究概要 |
高エネルギ-物理学研究所の放射光実験施設(ARーNE1)で、円偏光した50beV前後の単色X線を用いて、磁気コンプトンプロファイルを測定し、金属合金の磁性電子状態を研究した。 当該年度の成果は下記のとうりである。1).強磁性体、Fe,Niのスピンの運動量分布に、電子間の多体効果が顕著に現われていることが、バンド理論にもとずく数値計算との比較で検証された。2).Feについては三次元スピン運動量密度を、再構成の手法によって、実験的に求めることに、世界で初めて成切し、スピンの電子状態がより詳細に理解出来るようになった。3).アモルファスFeGd合金で,3d元素と4f元素の各々の磁気モ-メントを、それらの運動量分布の違いから、分離して評価することに成功した。このような試みは、やはり世界で初めてである。このような分離評価は、他に方法が極めて少さく,この成功は、磁気コンプトンプイルに新しい利用法を提供したことになる。4).Fex Ni_<1-x>合金の組成依存性を測定し、インバ-特性との関連を研究した。インバ-領域をNi側に越えるあたりで、運動量分布(スピン成分)の異方性が,大きく減少することが判明した。 さらに測定条件を拡大する為に、高温度(T〈600℃)測定用試料ホルダ-を整備中である。超電導マグネットと組み合わせる手法によって、キュリ-点近傍の電子状態を研究する計画である。 上記の研究の成果は、陽電子消滅国際会議,およびサガモア国際会議(電荷、スピン、運動量密度に関する国際会議)での招待講演,および一般講演で報告された。 なお、円偏光X線のエネルギ-を140beVに増加させ、半導体検出器による測定で、運動量分解能が0.54a.u.に向上することがわかった。これまでは、0.75a.u.であった。
|