研究概要 |
準安定状態の存在が系の動的性質に重要な役割を持っていることに着目した,本研究の目的は,多重な準安定状態をもつ系における平衡状態への緩和機構にたいし,いくつかの典型的な例の研究を通じて基本的な性格を解明し,いわゆるコンプレックス系の緩和現象の従来より一層深い理解を目指した。 川崎・宮下は,長さが不均一な強磁性本(ファジースピン系)を高温から転移点以下に急冷したときの秩序形成のダイナミックスの研究を行った。この系における遅い緩和過程を,緩和時間のサイズ依存性を調べることにより,その素過程に立ち戻って解明に成功した。冨田・宮下は,動的イジングモデルのシュミレーションにより,準安定状態の緩和過程に及ぼす系のサイズの効果を克明に調べ,反転磁場と系のサイズをパラメータとして,決定論的な振る舞いを示す領域と,確率論的な振る舞いを示す領域に分類されることを明らかにした。 冨田は,秩序パラメータが保存される系の緩和における空間構造(パターン)の発展過程を可視化すると同時に,ギブス・トムソン境界条件のもとでの拡散過程の準安常近似をランダムな形状の導体境界を有するポテンシャル問題として扱い,界面動力学の新しいタイプの現象論的方程式を導出している。宮下は,A)準安定性をもつ秩序化過程における動的性質として,蜂の巣格子上での強磁性イジング模型の秩序形成の研究を行った。B)フラストレーションのある系での状態の縮重度の相転移の効果を調ベる目的で,3次元層状三角格子(六方晶)上でのイジング的異方性をもつハイゼンベルク模型の相転移,秩序相の性質を異方的結合定数をもつ模型(Aモデル)で調べた。相転移の様子はz成分とxy成分が逐次的に相転移(TC1,TC2)を起こし,分担者がシングルイオンタイプの異方性でこの模型を調ベたときのものとよく似ている。C)量子スピン系に関しては,不純物のある2次元反強磁性ハイゼンベルグ模型を調ベた。特に,不純物濃度と基底状態での反強磁性長距離秩序の喪失の関係を調べた。
|