研究概要 |
液体酸素の過熱限界点に対する強磁場効果の実験的研究を行い、ほぼ当初の計画通り終了することが出来た。以下の主な経過,結果を要約し成果報告とする。 1主旨:過熱限界点の研究は一次相転移のonset,核の界面エネルギ-,核生成のkinematicsなどの諸点より重要である。このような研究において、唯一の磁性液体である液体酸素の強磁場効果には非常に興味がもたれるが、これまで調べられていなかった。本研究は、酸素の過熱限界点に対する強磁場効果についてなされた初めての研究である。 2実験方法:本研究では少量のサンプル液を磁場均一度のよい空間で、高精度の測定を可能にするため、ヒ-ト・パルスを用い、得られたサ-モグラムより過熱限界点を決定する方法をとった。この方法に基づいて、極低温かつ超伝導強磁場下において、測定精度・安定性・計測速度等の点で従来より優れた自動化測定システムを完成させた。このシステムでは、本科学研究補助金によるデジタルストレ-ジ型オシロスコ-プ,40Mバイトのハ-ドディスクおよびアンプ調整用の直流電源が重要な役割をはたしている。 3実験結果:この装置を用いて、まず予備実験として、ゼロ磁場下で液体酸素,液体窒素をサンプルとして過熱限界点の測定を行い、従来の実験値および理論値と比較検討した。その結果これらの間に矛盾のないことが認められた。次に7Tまでの強磁場下で液体酸素の過熱限界点を測定した。その結果、磁場下では過熱限界点が明らかに低下することが分かった。外圧1atm,磁場7Tの場合、過熱限界点の低下は約1.4Kであった。 4学会発表:以上の結果は、低温工学・超伝導学会(1991,秋),日本物理学会(1992,春)にて口頭発表された。
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