研究概要 |
1.本研究計画の目標は,多層膜中性子干渉計の改善とその応用であった。結論的にいえば,干渉計の改善に長期間要したため,研究計画は約1年遅れて達成される予定である。 2.多層膜中性子干渉計の性能の改善のためには,干渉計用の4つとミラー位置の微調整の精度を高めること及び多層膜ミラーの一次元格子としての完全性を高めることがきわめて重要である。 3.前者は,ピエゾ素子を主体に,平面度の良い定磐,レーザー干渉計,高精度の一次元測長器を組み合わせて用いることにより,およそ10Aの精度で位置の微調整をすることが可能になった。この技術開発は主として平成3年度になされた。 4.後者を実現するためには,ミラー基板の平面性(粗さと平面度)を従来の技術的限界を越えて改善することが必要であった。そのために基板の研磨方法の開発が不可欠であるが,平面性の精密な検査に基づいてその開発は達成された。また,多層膜ミラーの一次元格子としての完全性は,シリコン完全結晶を用いたダブル・ディフラクションの方法により実際に冷中性子を用いて1秒以下の角度精度で確認された。 5.ミラー基板の平面性の改善に約1年を要したため,研究計画は大幅に遅れたが,残されたものは下記の予定で実施される。(1)改善された多層膜中性子干渉計の特性試験は,平成5年の前半に行われる。(2)干渉計用の磁気多層膜ミラーの開発と量子力学的観測問題への応用は,平成五年度の後半以降に行われる。
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