研究概要 |
岐阜県北部の跡津川断層直近の東京大学宇宙線研究所神岡地下観測所奥の坑道で、ボ-リング孔より噴出している地下水を導水し、水中ラドン濃度の測定をしてきた。1990年12月以降の予備的観測および本年度の観測からは次のような成果が得られている。震央距離(△)50km以内,マグニチュ-ド(M)3.5以上の地震活動とラドン濃度の変化を対比すると,東側の北アルプスに沿う地震活動,すなわち烏帽子岳,焼岳,乗鞍岳周辺に発生する群発地震の活動に対しては,△が小さいにもかかわらず,ラドン濃度の変化は明確ではない。跡津川断層,午首断層に沿う地震活動では,Mが3.0程度のものも含めて、ラドン濃度に変化が現われるものもあった。特に,1991年2月28日のM=3.9の地震に関連した変化は,2日前から減少し,地震後の振動変化と増大、そして5日後に通常のレベルにまでもどっていることが分かった。さらに多くのデ-タを得るため,観測は現在も継続している。又,根尾谷断層に近い岐阜大学の上水道(地下水)についても断続的であるがラドン濃度の観測を行い,人工的原因による変動を検出し、その影響を除外することが可能となった。 火山噴火予知の基礎的デ-タを得るため,活動の活発な桜島周辺で,大気中ラドン濃度の測定を鹿児島市内(鹿児島大学),と有村(桜島)で行なってきた。鹿児島市内では,12月16の噴火と降灰にともない2日間に渡って20%のラドン濃度増大があった。有村では,噴煙の降下に伴い,2倍にまで濃度が増加することが知られた。白根火山での11月の約10日間の観測では,噴気の高温ガスの冷却および導引方法を考慮した観測容器を製作し、1日以下の大気圧の短期変動とラドン濃度が逆相関にあるという結果を得た。又,トリウム系列のThC'も高濃度で検出され,ウラン系列のもとの対比等で,火山深部の活動情報が得られることも分ってきた。
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