研究概要 |
鳥取県東部の吉岡・鹿野断層は1943年鳥取地震(M=7.2)により生じた地震断層で,地質調査により断層の形状,ずれの量がほぼ明らかにされている。この断層群の近傍に2カ所の自噴の温泉(吉岡,鹿野)がある。また,地震活動については京都大学防災研究所によって,日本海沿岸沿いの活動域が明確になり,その幅,震源の深さが精度良く決められている。そして,断層と地震活動の関係が推定されている。本研究では,温泉水の地殻応力との応答を推定する目的で,吉岡温泉にて温泉水の電気伝導度の連続観則と,鹿野断層の2kmの島取市河内にて微小地震観測を行った。地震活動はSーP時間が2秒以下の断層近傍の微小地域を8月から12月までに約21個記録した。これらの極微小地震は鳥取観測所の観測網でも観測されていない地震である。しかし,断層近傍で応力変化を発生させるような地震は発生せず,直接的な温泉水の成分変化と温度を測定することで周辺部に加わる地殻応力の変化を推定することは出来なかった。 観測期間中1991年8月28日に約100km離れた島根県東部にM=5.9の中地震が発生して,地震後温泉水の電気伝導度の時間変化が観測された。これは温泉の生成機構が地下内部での応力変化等に対応していることを示している。この関係を明瞭に知るために震央の近くの玉造温泉において電気伝導度の連続観測を開始した。一方,地震活動では地震前の活動が活発で,この地域への何かの影響を示唆している。そして,地震後は発生数が減少している。観測された鹿野・吉岡断層周辺の地震活動と温泉水の成分変化の関係を解明するために,吉岡温泉の湧出機構の地殻応力応答のモデル化を行いつつある。
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