研究概要 |
最近地震学の進歩により,島弧下のサイスミックトモグラフィーが確立されつつある。そのダイナミックな効果は,地殻・上部マントル内の密度不均一による内部荷重問題として取り扱うことが可能である。本研究において,外部・内部荷重による密度成層した粘弾性地球モデルの各々緩和時間及び緩和モードを,粘性構造及び荷重のスケールの関数として評価した。その結果,下部地殻ガリソスフェアとして振る舞う場合と,島弧のようにアセノスフェアの一部として振る舞う場合において,上部マントル内の内部荷重による地殻・マントルのダイナミックスは有意に異ることが判明し,現在Geophysical Journal Internationalに投稿中である。地殻下部を含めて地殻ガリソスフェアとして振る舞う場合は,単に表面の隆起が起こり,もし定常的内部荷重を考えるなら,表面変形を含めてマントルの運動は10^3-10^4年で定常に達する。しかし下部地殻が上部マントルと同程度の粘性率(〜10^<26>Pas)をもち延性的に振るまう時には,定常的なマントル内の内部荷重(たとえばマントルプリューム)に対し次のような現象がおこる。初期には下部クラストもリソスフェアの一部として振るまい,表面地形の隆起が起こる。次に上部マントル(密度〜3.3g/cm^3)と下部クラスト(密度〜2.8g/cm^3)の密度差のため力学的カップリングが両層間で1Ma後(下部地殻と上部マントルの粘性率による)に起こる。この結果,内部荷重直上部の下部地殻物質が周辺部に押し流され,地殻の薄化及び表面の沈降がおこる。以上が本研究の主な結果であるが,今後この現象とリフティング・背弧海盆の拡大及び造山運動との関係という観点から研究を進めて行きたい。又研究費用の一部は西九州の海面変動によるマントルレオロジーの推定の研究にも使用させて頂き,データ採集及びその解析に役立てることができた。
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