研究概要 |
1980年の伊豆半島東方沖群発地震において,その最盛期に地震発生と海洋潮汐の間に著しい相関が認められた。このような地震と潮位との関係を明らかにするために,岩石試料に繰返し荷重を加えた場合の微小破壊振動(AE)の発生特性を実験的に研究した。伊豆半島沖の群発地震は地下のマグマの貫入による引張り破壊によって起こると考えられるので,本実験では岩石の角柱試料に4点曲げの方法で引張応力を加えた。荷重のかけ方は潮汐に類似の正弦型とし,繰返し荷重の振幅を次々と増大させ,それぞれ100回以上の繰返し荷重測定を行った。 その主な結果は,(1)AEは,荷重の増加過程と減少過程の両方で発生するが,特に,荷重振幅の小さい場合の初期には増加過程で発生する。(2)繰返し荷重の振幅が比較的小さい場合には,ある特定の応力レベルで発生し,AEの振幅の大きさがほぼ一定となる。つまり,AEファミリーの発生が見られ,破壊面のstick slipによって発生したと見られる。(3)繰返し荷重の振幅が大きくなると,AEの振幅分布は石本-飯田の式で表わすことができる。これは微小破壊によるAEの発生が卓越することを示す。今回の結果から,岩石の繰返し応力下で発生するAEの発生は,き裂進展と,破面の食い違い面でのstickslipによるとの結論を得た。 今回の実験の結果を見ると,群発地震の場合といくつかの点で共通点が見られる。(1)活動のピークが最大応力時と必ずしも一致しない。(2)特定の応力レベルで繰返し活発な活動が見られ,地震ファミリーが発生する。(3)群発地震では,応力増加過程で活発な活動が見られたが,これは実験において,荷重振幅が比較的小さい場合の初期に見られた傾向と一致する。この様に,今回の結果は,地震と潮汐との関係を解明する上で重要な手がかりを与えるものである。
|