研究概要 |
1.空電による電離層高度測定の高精度化および高速化:従来の大型機による空電解析システムでは,周波数変動を最小とする疑似空電パラメ-タの推定を基本とし,最小2乗法を適用していたが,継続時間の短い空電信号の解析には適さないことが判明した.これは,短時間フ-リエ変換に基づくスペクトルの拡散および極小値探索固有の問題に基づくものである.特に昼間の空電の継続時間は短く、解析不可能となる場合が多い.これを克服するため,任意の疑似空電によって変換された信号の位相変動を最小とする空電パラメ-タ推定法を開発した.この方法では極小値探索を避け,線形連立方程式の解として直接未知パラメ-タ-を求めている.この方法の特徴は,(1)解析の高速化にともないパ-ソナル・コンピュ-タによる実時間観測の実現が可能となったこと,(2)従来の方法に比べて解析精度が格段に向上したこと,(3)空電の解析のみでなく,ホイッスラやコ-ラスト言った時間と共に周波数が変動する非定常信号の解析にも応用可能であり,この種の信号のスペクトルの微細構造解析および特析および特徴抽出に適していることである.2.空電の到来方位測定法の開発:従来からの周波数空間における方法とは根本的に異なり,時空間における測定法である.この方法により,測定手続の簡単化および測定精度が向上が実現され,1観測点による電離層観測が可能となる.3.空電の2点同時観測及び解析システムの検討:平成3年11月11日〜15日の4日間にわたり,群馬県沼田市および千葉県館山市で,空電の同時観測を実施した.長周期変動解析を可能にするためには,昼夜を分かたず空電による電離層観測が可能が否かを検討する必要がある.既に,新たに開発した解析システムを計算機上に組み込み,シミュレ-ションによる評価を終了している.現在,観測デ-タの解析を通じて下部電離層実時間観測の問題点を検討中である.
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